建造工程
STEP1
設計は機能設計と生産設計に分けられます。機能設計は受注前から船主と打合せをして要望をまとめ、様々な規則の中で性能を最大限に発揮出来るよう設計します。生産設計は機能設計の図面や情報をもとに、合理的な生産を行うための詳細図面を作成します。また生産設計の「現図」という工程では、図面から、実際に切断、組立が可能な一品データを作成します。以前は実物大の一品データを作成していましたが、近年ではコンピューターを使用して作成しています。
STEP2
現図データを基に、鋼板から部材の切り出しを行うと同時に、部品の名前や取り付け場所等を記入するマーキングを行います。船は複雑な曲面で構成されており、部品によっては鋼板を曲げる作業を行います。プレス機や、ガスバーナーで、少しずつ丁寧に曲げ、精度の高い部品を作成します。特に外板の曲面を熱加工によって曲げる作業は難易度が高く、まさに職人技が必要となります。
STEP3
巨大な船は、複数に分割されたブロックを工場内で組み立てる「ブロック建造方式」で造られます。切り出した部品や曲げ加工された部品を小組立し、小組立した部品をさらに中組立し、立体的なブロックに組み上げていきます。
STEP4
ブロックを製作する途中や製作した後に、配管や電線、手摺や梯子といった付加価値のある部品を取り付けます。これを「先行艤装」と呼びます。ここでの作業能率が、完成までの期間やコストに大きく影響します。艤装工事の範囲は船全体に及び、また船主の使い勝手に影響することから、豊富な経験や知識が重要になります。
STEP5
大組立では、大分事業部で製作されたブロックを大在工場へ海上輸送し、大在工場内で2~7つのブロックを接合しさらに大きなブロックにします。大在工場の570トンゴライアスクレーンの能力に近い重さまで大きくすることが能率向上に繋がります。その後このブロックをドック内で船の形に組み上げていきます。これを搭載と呼びます。最大搭載ブロックは約500トンもの重さになるため、どの範囲を搭載ブロックにするかを計画していく作業や、正確な位置に据え付けることに大変な技術と労力が必要になります。
STEP6
船の形が出来上がると、ドック内に海水を注水し浮上させます。この時点ではまだ自走することは出来ません。傾斜船台のある造船所では、「進水式」を催し、船が海に滑走していくダイナミックな様子を船主や関係者にお披露目します。
STEP7
進水後の船は入出渠水路や岸壁に係船され、メインエンジン、電子機器類、内装等の設備を船体に取り付けていきます。工事と並行して各機器の作動確認や調整を行います。またブロック段階から徐々に艤装工事の一つである塗装工事を行っていきます。塗装は船の美観だけではなく、腐食防止や燃費向上など様々な役割を果たしています。
STEP8
完成状態が近づくと、速力試験や旋回性能、メインエンジン等の性能を確認する試運転を行います。契約通りの数値を達成していること、各規則を満足していることが確認されると、いよいよ引渡しとなります。当社では完工時に本船の命名を行うセレモニーを実施します。船主関係のお客様を多方面よりお招きし、船内見学や出港見送りにお立合い頂きます。この日ばかりは建造中の苦労を忘れ、今後の本船の安全航海を願う感慨深い一日となります。